灰れん石 zoisite Ca2Al3O(SiO4)(Si2O7)(OH) 戻る

結晶構造で見ると,Feを含まない斜灰れん石の格子単位での(1 0 0)の双晶構造の多形で,斜灰れん石の高温相にあたり,それより産出はやや少ない。

斜方晶系 二軸性(+)2Vz=60〜70° α=1.685 β=1.688 γ=1.695 γ-α=0.01程度 屈折率は高いが,干渉色は低く1次の灰〜白程度。時に灰青〜藍色がかった異常干渉色を示す。

多色性:無色でなし

形態:b軸方向に伸びた柱状の自形〜半自形。不定形粒状集合体のこともある。

へき開:伸び方向(b軸方向)に1方向に完全なへき開が見られる。

消光角:へき開や伸び方向に対し直消光。b軸方向から見たへき開線に対しても直消光する点が斜灰れん石とは異なる。
※ただし,結晶片岩の薄片は通常,線構造に対し平行に作製されるので,b軸方向に伸びる灰れん石や斜灰れん石のb軸方向から見える粒子はその薄片ではあまり見つからない。

伸長:b軸方向に伸び,かつb=Yなので,正の場合も負の場合もある。

双晶:なし

累帯構造:斜灰れん石に比べ,Al⇔Fe3+の置換はごくわずかで,累帯構造はほとんどない。

産状

高圧型の広域変成岩に出現し,角閃石片岩の構成鉱物として普通角閃石,アルマンディン,透輝石,ソーダ雲母,藍晶石,石英などと共生して見られ,しばしばエクロジャイトにも見られる。一方,蛇紋岩中のロジン岩は大抵,灰れん石ができる条件よりも低温変成であり,そこからは斜灰れん石が産し,変はんれい岩の斜長石の変質物も斜灰れん石のことが多い(いずれもぶどう石などと共生する)。
※ただし,Fe3+に富む斜灰れん石〜緑れん石は低温〜中温の広い変成相で安定で,緑色片岩・青色片岩・角閃石片岩などによく見られ,時にエクロジャイトにも産する。



角閃石片岩中の灰れん石 Zo:灰れん石,Hb:普通角閃石,Alm:アルマンディン
平行ニコルでは屈折率が高く,輪郭や割れ目がはっきりしている。クロスニコルでは斜灰れん石と同じく結晶の伸びに対し直消光するが,斜灰れん石とは異なり,Al→Fe3+などの組成変化に乏しく,常に干渉色はかなり低く,1次の白色程度までである(なお,異常干渉色で藍色に見えている)。またb軸方向から見たへき開線に対し直消光する点でも斜灰れん石とは異なる。
※ただし,結晶片岩の薄片は通常,線構造に対し平行に作製されるので,b軸方向に伸びる灰れん石や斜灰れん石のb軸方向から見える粒子は薄片ではあまり見つからない。

肉眼で見た灰れん石を含む角閃石片岩
灰れん石は白〜灰白色部。矢印先の桃赤色はコランダムでその他の褐赤色粒はアルマンディン,暗緑色は普通角閃石